生産年齢人口減少に伴う労働需給ギャップ
目次
●はじめに
はじめに
今回は生産年齢人口減少に伴う労働需給ギャップについて解説します。
日本の住宅業界は、少子高齢化と生産年齢人口の減少に直面しているため、早急に労働需給ギャップという重大な課題に取り組む必要があります。
労働力の効率的な活用と、新たな人材の確保が不可欠な中での今後の展望について解説を行います。
生産年齢人口の減少
生産年齢人口(15~65歳人口)が減少に転じて既に四半世紀が過ぎた日本経済は、女性やシニアの就業率アップ等で何とか就業者を減らさずに持ちこたえてきました。
しかし、これからの15年間は、いよいよ働き手の減少が避けられなくなってきそうです。
住宅業界でも労働力不足は深刻で、特に、高齢化による職人不足が生産性に影響を与えます。さらに、省エネ住宅やリフォーム市場の拡大、都市再開発へのシフトも求められており、住宅業界の新たなビジネスモデル構築とイノベーションが必要不可欠な時代を迎えている中、生産年齢人口減少の問題は早急に対応しなければいけない課題であることは明白です。

労働需給ギャップから見る住宅業界の展望
そもそも労働需給ギャップとは、労働市場における需要と供給の間の差異を指します。例えば、工事の量に対して職人が不足している状態だと、労働需給ギャップは「需要過剰」の状態だと言えます。今後の住宅業界においては、職人不足が深刻化していくため「需要過剰」の状態になっていくことになります。
昨今の深刻な労働力人口減少による経済停滞に対応していくためには、やはりデジタル技術を活用した生産性向上の実現が必要となります。
実際、DX推進が2035年時点で970万人規模の省人化をもたらす可能性があるという試算が出ています。
特に、昨今注目されている生成AIにおいては、幅広い業務に影響を及ぼすことが見込まれ、その雇用へのインパクトは少なく見積もっても460万人相当に上るとの試算結果も得られています。しかし、DX・GX・半導体産業再生等の産業構造変化に必要な人材を考慮すると、依然190万人規模の人手不足が残ることもわかっています。また、全体としての需給ギャップに加えて、産業・職業間のミスマッチが480万人規模に拡大します。

この労働需給ギャップを踏まえると、住宅業界においても他の産業と同様に、DXやAI等の新たな技術の活用による生産性向上を図ることが求められます。
新たな技術を活用するためには、従業員のスキルアップも必要です。教育や研修を通じて、従業員が新しい技術を理解し、活用できるようにすることも非常に重要になってきます。
また、働き方の改革(業務改善と余剰時間の確保)と人材確保も重要です。柔軟な働き方やワークライフバランスの充実を図ることで、人材の確保と定着が期待できます。
新たな技術を導入する際には、その影響を考慮した上で、適切な管理と規制が求められるということも念頭に置きつつ、住宅業界がDX化とAIの活用を進めることが期待されます。
サプライチェーンの労働需給ギャップの現状
労働需給ギャップについては、住宅業界にとって重要なサプライチェーンである林業においても問題となっています。国政調査(総務省)の調査によると、林業従事者の数は長期的に減少傾向で推移しており、令和2年(2020年)には4万4千人となっています。また、林業の高齢化率(65歳以上の割合)は、令和2年は25%で、全産業平均の15%に比べ高い水準にあります。

現在の林業の現場では、従事者の高齢化が顕著であり、若い労働力の不足が問題となっています。このため、新たな人材確保や労働環境の改善が求められており、労働力不足解消のためのスマート林業の推進やM&Aの実施、職場環境の改善といった取り組みが急務となっています。
そして、重要なサプライチェーンのもう1つである物流業界においても、労働需給ギャップが問題となっており、需要の急増と労働力の不足という二重の課題に直面しています。
これを改善するために、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」及び「貨物自動車運送事業法」の一部を改正することが、令和6年2月13日に閣議決定されました。この改正により、物流業務の効率化と安全性の向上が図られ、労働力不足の一定の改善に繋がると予測されています。
住宅業界は大量の建材や資材を物流に依存しています。物流業界の労働力不足が深刻化すると、建材の供給が遅延し、住宅建設の進行が滞る可能性がありますが、法改正により物流の効率化が進めば、こうした遅延のリスクが軽減される可能性があります。
総じて、物流の効率化は、住宅業界における資材供給の安定化、コスト削減、安全性向上に寄与し、業界全体の信頼性と効率性を向上させることが期待されます。しかし、これらの効果を最大限に引き出すためには、住宅業界自体も効率化と安全対策の取り組みを強化していくことが重要です。
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