2026年、人材育成を“今のまま”続けてはいけません ~DX・AI時代に会社が崩れる理由と、その対策~
執筆:清水大悟(清水英雄事務所株式会社 代表取締役/住生活産業コンサル)

スキルアップやリスキリングという言葉が広く浸透し、厚生労働省をはじめとする行政や自治体では助成金・補助制度が拡充されています。しかし、ここで起きている変化は「補助金で学習費用を賄える」という表面的なメリットではありません。
むしろ本質は、人材育成そのものが経営課題へと転化したという点にあります。
DX、デジタル化、業務改善、クラウド導入──こうした取り組みを進めてきた企業ほど、実は人材育成が止まったままです。そしてそれは、2026年以降、企業力そのものを崩壊させるリスクへと変わっていきます。
いま、企業は問われています。
「今までの人材育成を続けるのか」
「それとも、育成の前提そのものを変えるのか」
ここでは、その理由と対策について整理していきます。
【第1章】DXを先行導入した企業ほど、人材育成がとん挫しています
ツール導入と教育不在が生んだ“DX疲弊”
この数年間のDXブームで、多くの企業がツール導入を先行しました。ERP、SFA、MA、チャットボット、AI搭載型ソフトウェア。
しかし、それらを「活用しきれないまま形骸化している」現場が急増しています。
理由は明確です。
デジタル化とは“人が変わること”を前提とした改革だからです。
ツール導入をゴールにし、人材育成が後手に回った瞬間、DXの価値は止まります。
そしてこれは、DXやAIに限った話ではありません。
マーケティング・営業領域でも同じ現象が起きています。
消費者行動が変わり、SNS・SEO・動画・コミュニティなど購買決定までの経路が複雑化しました。
しかし、多くの企業は「10年前のやり方」から抜け出せていません。
一方で、調査分析を進め、顧客理解を深め、発信や提案をアップデートしている企業は、明らかに成果を上げ始めています。
特に工務店や地場企業など、小回りが利く組織ほど「学ぶほどに結果が出る」時代に変わりつつあります。
いま、人材育成を止めている企業は、どの事業領域でも競争力を失いつつあるのです。
【第2章】AIが変えたものは、“役に立つ人材”の定義そのものです 経験・知識ではなく、変革を生む人材へ
AIの普及により「活躍できる人材とは誰か」という問いは、決定的に変わりました。
これまでは知識や経験が高く評価されていました。
しかし、AIは手順・情報・知識を自動生成し、補完する存在になっています。
では、これから価値を持つのはどんな人材でしょうか?
・抽象化できる
・問いを立てられる
・改善し続けられる
・言語化して共有できる
そしてさらに重要な視点があります。
「イノベ人材」が一般層に求められる時代になったということです。
かつては新規事業・経営企画・R&D領域に限られていた能力──
「変えられる人」「発想できる人」「環境を読み替えられる人」
これらはもはや、一部のリーダー層だけが持てばよい力ではありません。
営業、設計、管理部門、バックオフィス
どの領域でも“変わる力”を持つ社員が重要な戦力となっているのです。
【第3章】学ばない組織のままでは、会社は崩れていきます 自社が「成長できる環境」かどうかを見抜く視点
現場が学んでいない会社の特徴は、次のような状態です。
・研修制度はあるが、活用されていない
・講師に任せているだけで、内容を評価していない
・研修後に変化が生まれていない
・学びを定着させる仕組みがない
・「忙しいから」学習時間が確保できない
これらは、単に“制度があるかどうか”ではなく、
**「学習が企業文化として成立しているかどうか」**を問う視点です。
さらに深刻なのは、教育を提供する講師側にあります。
現在の研修市場の多くは旧態依然としており、
・テンプレ化された内容
・時代に合わない事例
・スキル観のアップデートなし
といった「学びの陳腐化」が深刻化しています。
つまり──
研修をしている企業ですら、学べていないのです。
【第4章】では、何を変えるべきでしょうか? 人材育成は“制度”ではなく“構造改革”です
まず最初に行うべきは、人材像の再定義です。
例:
DX前提の戦力 → ツールを使って成果を出せる人
AI前提の編集人材 → AIと協働し、価値を再構築できる人
この2つを区別せずに育成を行うと、育成体系そのものがズレていきます。
次に必要なのは、異業種スキルを取り込む視点です。
異業種スキルとは、例えば以下のようなものです。
・Webマーケティング思考
・情報編集・コンテンツ制作力
・UI/UX・サービス設計
・プロジェクトマネジメント
・ファイナンス/資産視点
・ユーザーコミュニケーション設計
工務店・流通店・建材メーカーでも、これらはすでに“武器”になっています。
さらに、人材戦略として必要なのは
「学習できる組織構造」の設計です。
制度・評価・時間・文化のセットとは、以下を意味します。
・学習時間を“仕事として扱う”制度
・学びと成果を紐づける人事評価
・自己学習を推奨する情報共有ルール
・学習成果を横展開し、組織知化する文化
これは「やる気のある人が勝手に学ぶ」状態ではありません。
会社が“学べる構造”を設計し、維持することが重要です。
【第5章】2026年、人材育成は“再設計の年”になります 変われる会社にしか、未来は残されていません
2024年は「AIが触られ始めた年」でした。
2025年は「AI・DXが現場に入ってくる年」になります。
そして2026年は、「人材戦略そのものが変わる年」になります。
企業は今、「人を変える」のではなく
「人が変わり続けられる組織」に自ら変わる必要があるのです。
学べる組織は強くなります。
学べない組織は静かに崩れていきます。
【まとめ】
スキルアップとは制度の話ではありません。
リスキリングとは研修の話ではありません。
すべては、「経営を更新するかどうか」の問題です。
清水英雄事務所では、
DX後の人材戦略構築や、組織設計を前提とした学習体系の構築支援を行っています。
人が変わることで、会社は変わります。
会社が変わることで、人はもっと育ちます。
2026年は、
「人材育成を再設計した企業」だけが前へ進める年になります。