木が、鉄やコンクリートの代わりになる日

執筆:清水大悟(清水英雄事務所株式会社 代表取締役/住生活産業コンサル)

超強化木材「スーパーウッド」と CLT/CLP がつくる建材の未来

建築は長い間、鉄とコンクリートを中心に発展してきました。
しかし今、その前提が静かに揺れ始めています。

米国で商用化が進む「スーパーウッド(超強化木材)」。
そして、日本でも採用が広がる CLT(直交集成板)や、国内で提案が進む軽量高性能パネル CLP。

木材は現在、単なる自然素材ではなく、
強度・軽さ・断熱性・環境性能を同時に満たす次世代構造材へと進化しつつあります。


1.スーパーウッド:分子レベルで木を強化する新素材

研究段階から注目されてきたスーパーウッドは、
木材からリグニンを選択的に除去し、セルロースを高密度に圧縮することで、
従来材とは異なる性能を発揮すると報告されています。

特定の条件下では鋼鉄並みからそれ以上の強度を示す研究もあり、
重量あたりの性能では非常に優れている点が特徴です。 また、加工プロセスの短時間化も進んでおり、
従来の高性能処理木材に比べて効率的に製造できる可能性が示されています。
現在は外装用途として商用化が始まっており、
構造材としての本格利用はこれからの研究成果に委ねられますが、
将来性は十分に議論されている技術です。


2.CLT:都市木造を支える「木のプレキャスト」

CLT(Cross-Laminated Timber)は、
板材を交互に直交させて積層した大判パネルで、
面としての強度、断熱性、寸法安定性に優れています。

中層建築を中心に採用が広がり、
一部では高層建築とのハイブリッド構造(RC・Sとの併用)も現実的な選択肢となりつつあります。
その結果、CLTは都市木造を支える重要な素材として存在感を高めています。

大判パネルを工場で生産し、現場で組み立てるプロセスは、
まさに「木のプレキャスト」と呼べる工法です。


3. CLP:軽量・断熱・施工性を高めた木質パネル(便宜的に CLP と呼びます)

ここでは、国内で開発・提案が進む
軽量・高断熱型の直交積層パネルを、便宜的に CLP と呼びます。

国際的に標準化されたカテゴリー名ではありませんが、
実際には次のような特徴を持つ木質パネルが存在しています。

・CLTより軽く扱いやすい
・中空層を設けやすく、設備配管の自由度が高い
・断熱性能を確保しやすい
・施工スピードを上げやすい

構造材として重量や剛性を重視する CLT に対し、
CLPと呼ばれるタイプは施工性と熱性能を強みにしている点が特徴です。

木質パネル工法が多様化する中で、
こうした軽量・高性能パネルの価値はますます大きくなっていくと考えられます。


4. なぜ今、木材テクノロジーが急速に進化しているのか

この3つの技術には、共通する背景があります。

  1. 脱炭素の要請
    鉄やコンクリートは製造段階で大量のCO₂を排出します。
    森林由来の材料を活用することは、建築分野の脱炭素に直結します。
  2. 都市の木造化ニーズ
    防火技術や規制の進化により、
    「木造=低層」という固定観念が崩れ、中層〜準高層の木造化が世界的に進んでいます。
  3. 木質材料の性能向上
    これまで研究段階にあった木質強化技術が、
    産業として成立するフェーズに入りつつあります。

木材は、環境に優しい素材であるだけでなく、
工業材料と比較しても競争できる性能を持つようになってきています。

5. 競合ではなく、補完し合う関係へ

スーパーウッド、CLT、CLP の3つは、
互いに競い合うというより、むしろ補い合う関係にあります。

・スーパーウッド
 高強度・高耐久の新素材。まずは外装材、将来的には構造材も視野。

・CLT
 中層中心の構造パネルとして実績があり、都市木造の中核を担う存在。

・CLP(便宜名称)
 軽量性・断熱性・施工性を高めた木質パネルとして注目が高まる。

これらを用途に応じて組み合わせることで、
木造の可能性は大きく広がります。
鉄やコンクリートに RC・S・SRC などの種類があるように、
木材も複合的に使い分ける時代に向かっています。

6. 木で街をつくる未来へ

もしスーパーウッドの構造材利用が進めば、
木造はさらに高い領域へ踏み込む可能性があります。

・高層建築
・橋梁などのインフラ
・過酷な環境での外装や外構

一方で CLT・CLP のような大判パネル技術は、
都市の建設効率そのものを変える力を持っています。

自然素材でありながら工業的強度を持ち、
循環可能で、炭素を固定し続ける素材。
木材は「古い素材」ではなく「未来の素材」へと再定義されつつあります。

まとめ

木材の価値は、もはや温かさや質感だけでは語れません。
強度、軽さ、断熱、高耐久、環境性能。
求められる要件に応じて加工し、組み合わせ、構造として成立させる時代になっています。

スーパーウッド
CLT
CLP(便宜名称)

これらは木造の未来を切り開く技術であり、
建築、インフラ、都市計画に新しい選択肢をもたらしています。

木でできることは、これからさらに増えていくはずです。
その第一歩が、すでに始まっています。