【第3章】年功序列の変化と、若手・異業界人材が台頭しやすくなった理由 “スキルと動ける力”が評価される時代へ

執筆:清水大悟(清水英雄事務所株式会社 代表取締役/住生活産業コンサル)

建設業界では今、制度改正・働き方改革・人手不足が重なり、
“業務そのもののあり方”が大きく変わっています。

この変化によって、
「経験年数」よりも
“動ける力・前に進める力” が評価される構造へ移行しています。

そしてこの流れが、
・若手の台頭
・異業界人材の活躍
・ベテランの役割変化
を生み出しているのです。

本章では、その理由を整理していきます。


1. 業務が細分化し、「経験」より“動けるかどうか”が重要に

建設業界の中で今、最も大きなキーワードは
「少ない人数で、今まで以上の生産性と効率性を求められる時代」
であることです。

ここで誤解されがちなのは、
“1人で背負う仕事量が増える” という認識です。

本来はこうなるべきです。

1人が抱えるタスクは増えるが、
AI・ソフト・新しいワークフローを活用することで
負担は増えず、むしろ軽くしていく。

つまり、
・制度対応の複雑化
・書類の増加
・工程管理の高度化
は避けられない一方で、

「1人でやる」ではなく、「新しい手段で仕事を軽くする」ことが必須になります。

だからこそ評価されるのは、
・新しいやり方をまず触ってみる
・困った時に止まらずに動ける
・他部署と調整しながら前に進める
といった“行動の速さ・柔軟さ”です。 経験も大事ですが、
動ける人が強い時代に変わった、というのが現実です。


2. 若手が活躍しやすい理由

“素直さ・吸収力・説明力”が時代に合っている

建設業界で若手が評価されやすくなった理由は
単なる「デジタルに強い」だけではありません。

次のような“時代との相性の良さ”が背景にあります。

1)制度・性能が毎年変わる時代は、全員“ゼロから学び直し”

ZEH、省エネ基準、適判一本化…
毎年のように見直しがあります。

つまり、
ベテランも若手も同じスタートラインに立つ領域が増えたということです。

若手の「吸収の速さ」がそのまま評価につながります。

2)説明・共有・コミュニケーションの中心に“対話”が増えた

図面説明、施主対応、チャット、社内共有…
若手が得意とする「丁寧に説明する力」が価値になっています。

3)“浅く広く”触れるデジタル感覚が強い

専門家ではなくても、
アプリ・クラウド・写真管理を
“拒否せずまず触ってみる”ことができる。

この浅く広いデジタル感覚は、現場の効率化と相性が抜群です。


3. 異業界人材が建設業界で活躍しやすくなった理由

必要とされているのが、
“専門性より、整理・共有・段取り力”
だからです。

異業界で一般的な
・情報整理
・議事録
・メール/チャットでの共有
・段取り
・顧客対応
この基本動作こそ、建設業界で今最も欠けやすい部分です。

業務が複雑化した今、
異業界で培った「進め方の基礎」そのものが武器になるのです。

具体的には…

・図面が複雑 → 情報整理スキルが活きる
・制度対応が多い → 論点整理・メモ力が活きる
・部署が増えた → 調整力が活きる
・施主対応 → 顧客コミュニケーションが活きる

だからこそ、異業界出身者でも
現場を理解しつつ進め方を整える役割として活躍できるのです。


 4. ベテラン勢の価値は「導く力」へシフトしている

ベテランが持つ価値は、
・判断力
・落としどころの感覚
・現場の危険ポイント
・施主と職人の心をつかむバランス
など、今でも絶対に欠かせません。

しかし業務の変化により、
役割は
「自分で全部こなす」
→「周りを導き、安心感を与える」

に変わりつつあります。

そしてここに、大悟が指摘した 重要な視点 を追加します。

●工務店社長自身も“学ぶ側”に立つ必要がある

多くの経営者は、
「人材育成=社員を育てること」
と考えがちですが、

本当は順番が逆です。

社長自身が、
新しい制度・働き方・デジタル・業務設計を
誰よりも率先して学ぶ姿勢を示すこと。

これが、会社の空気を変える最初の一歩です。

社長が“変化の前提”に乗っていないと、
社員は絶対に変わりません。


5. 評価軸は「年数」→「伸びしろ × 動ける力」へ

今の建設業界で評価されるのは次の通りです。

・新しい情報を素直に取り入れられる
・業務の段取りができる
・周りを巻き込みながら前に進められる
・制度や性能に関心を持てる
・現場と設計の要点をつなげられる

これらができる人が、
若手・中堅・ベテラン・異業界関係なく
“次の時代に強い人材”になります。


まとめ

年功序列が崩れるのではなく、
評価の軸が “経験量の時代” から “動ける力の時代” に変わっている。

これからの建設業では、
・若手の吸収力
・異業界人材の整理力
・ベテランの導く力
・社長自身の学ぶ姿勢

これらがすべて組み合わさって
“強い組織”ができていきます。

次章では、
採用の入口と企業アピールがどう変わっているのか
SNS・多様な人材の活用・採れる会社の条件

についてまとめていきます。