なぜ今、フィンランドなのか
― 2030年代の住宅・不動産ビジネスを考えるために ―

■ 日本の住宅市場は、いま転換点にある
日本の住宅市場は、いま明確な転換点に差し掛かっています。省エネ基準の義務化、GX ZEHの登場、カーボンニュートラルに向けた制度強化。これまで任意で取り組まれてきた性能やエネルギー対応は、2025年以降「前提条件」として扱われる段階に入りました。加えて、少子高齢化の進行、ストック市場への移行、人材不足やコスト高騰など、住宅会社を取り巻く環境は構造的に変化しています。
この状況の中で、住宅会社は「何を商品として提供するのか」「どこまで価値を広げるのか」「どのように継続的な収益モデルをつくるのか」という再定義を求められています。住宅単体の性能やデザインだけでなく、街・エネルギー・福祉・公共といった周辺領域まで含めた価値設計が必要になり始めています。
■ 欧州はすでに次の段階に入っている
日本がいま議論しているのは、住宅単体の省エネ性能や創エネの話です。しかし欧州では、すでにその先、社会全体でエネルギーをどう設計し循環させるかという段階に進んでいます。フィンランドは2035年カーボンニュートラルを法的目標として掲げ、電源構成の大半を非化石電源で賄うなど、脱炭素社会の基盤整備が進んでいます。住宅性能の数値そのものは当たり前となり、いま問われているのは「住宅・都市・エネルギーを一体でどう設計するか」です。
■ 北欧は「日本の未来の姿」である

北欧は日本の未来を表していると言われることがあります。これは建築業界に限らず、さまざまな分野で言われていることです。実際に現地を訪れて感じたのは、単に先進的であるということだけではなく、「暮らしている人たちの安心感や余裕」でした。フィンランドでは笑顔で暮らしている人が多い印象があり、それは社会保障や福祉の仕組みがしっかり機能していることと無関係ではないと感じています。
■ 2018年時点で、日本の2026年を超えていた
私自身、2010年前後に初めて北欧を訪れた際には、タブレットによる見守りシステムや、家庭内のIoT機器(冷蔵庫など)、ロボット(ペッパーのような対話型機器)が住宅や施設に当たり前のように組み込まれている状況に驚きました。
そして2018年に再度訪れた際には、日本の現在(2026年)を超えていると感じるレベルで、住宅と街づくりの考え方が進んでいました。もちろん住宅フェアはその中でも先進的なエリアではありますが、それでも日本のまちづくりに大きな変化が起きていなかったのは、法規制や市場整備の遅れが影響していたのだと現地を見て実感しました。
■ 日本との決定的な違いは「まちづくりの概念」
日本の住宅会社は、どうしても「家を建てること」「家の中の暮らし」にフォーカスしがちです。一方、北欧では住宅は街の中の一部として設計されており、外とのつながり、コミュニケーション、街との共生といった視点が強く意識されています。閉鎖的ではなく、開かれた暮らしの設計が前提になっているのです。
■ 住宅フェアは「未来の街の実験場」

フィンランドの住宅フェアは、日本のモデルハウス展示とは全く異なります。戸建・集合住宅・非住宅・公共施設を含めた街区全体が整備され、来場者はその街を歩きながら住宅・エネルギー・インフラ・コミュニティを同時に体感します。そこでは、性能・省エネ・バリアフリー・インテリア・ライフスタイルまでが一体で設計されており、住宅は単なる商品ではなく、長期利用される社会資産として位置づけられています。
■ 非住宅・福祉・公共施設にこそヒントがある

今回の視察では、住宅だけでなく高齢者福祉施設や公共建築、都市再生エリアなど非住宅分野も確認します。ヘルシンキの中央図書館Oodiのような施設は、学び・交流・文化活動の拠点として設計されており、人が集まり続ける仕組みが空間として成立しています。また、介護福祉施設においても、単なるケアの場ではなく「生活の延長線上にある空間」として設計されている点は、日本の住宅・不動産ビジネスにとって大きなヒントになります。

■ 日本がこのまま遅れてしまう可能性
今後、日本では不動産IDやAIによる住み心地・資産価値評価などが進み、住宅は長期的に評価され続ける資産へと変わっていきます。しかしその一方で、現場の事業者がこうした世界の流れや、すでに海外で実装されている事例を知らないままでいると、国が目指す方向と現場の実態との間に大きなギャップが生まれます。目の前の受注や経営状況に追われる中で視野が狭くなり、結果としてさらに遅れてしまう可能性もあると感じています。
■ 今回の視察で持ち帰ってほしいこと
海外視察の価値は「固定概念が変わること」にあると思っています。今回の視察で参加者の皆さんに持ち帰ってほしいのは、単なる知識ではなく、その感覚の変化です。そしてその変化を、自社だけで留めるのではなく、見に行っていない人に伝え、広げていくという意識も持ち帰っていただきたいと考えています。
住宅フェアでは多様な住宅を見ることができるため、設計面において「暮らしをどうデザインしているのか」という視点もぜひ見ていただきたいポイントです。
■ フィンランド視察で確認すること
今回のフィンランド視察は、住宅・非住宅・福祉・エネルギー・都市計画が一体となった「生活インフラの設計」を実際の街と建築を通して確認し、日本の制度・市場・文化の中でどのように事業として落とし込むのかを考えるための機会です。
単なる海外事例の見学ではなく、2030年代の住宅・不動産ビジネスの方向性を考えるための実務視察として位置づけています。
▼フィンランド住宅・建築・まちづくり視察ツアー
詳細はこちら
https://au-shimizu.co.jp/information/3598