在宅介護・在宅医療時代に、住宅会社が提案すべき家とは

執筆:山本知史(清水英雄事務所株式会社 ディレクター/住生活産業×医療・介護視点コンサルタント)

■住宅に求められる役割が変わり始めている

これからの住宅会社に求められるのは、今の暮らしやすさだけを提案することではありません。
年齢を重ねても、住み慣れた自宅で暮らし続けられる安心まで含めて提案できるかどうかが、差別化のポイントになっていきます。

多少高くても「あの会社にお願いしたい」と思われる住宅会社は、価格競争に巻き込まれにくく、紹介も生まれやすくなります。

そうした提案力が、これからの住宅会社にはより重要になっていきます。

■背景にあるのは、高齢化そのものではなく“受け皿不足”

この変化の背景にあるのは、単なる高齢化ではありません。

医療・介護の需要が高まる一方で、人材不足や受け皿不足が進み、病院や施設だけで支えるモデルが地域によって難しくなっていくことです。

その結果、住まいには「暮らす場所」としての役割に加え、療養や介護を支える場としての役割が強く求められるようになります。

2025年以降、在宅への移行、高齢者世帯の増加、85歳以上人口の増加を経て、2040年に向けて住まいの意味そのものが変わっていく流れが見えてきます。

■これから必要なのは「支えられる家」

では、これからの住宅には何が必要なのでしょうか。

求められるのは、単に住める家ではなく、暮らしを支え続けられる家です。
将来の介護を見据えた動線、車椅子でも暮らしやすい設計、水まわりと寝室の配置、コンセント計画など、住まいの設計そのものが暮らしやすさを左右します。

さらに、手すりや段差解消だけでなく、トイレ・洗面・寝室の近接、訪問看護や訪問介護が入りやすい動線、停電時の電源確保、見守り機器との親和性まで含めて考えることが、これからの差別化につながります。

■太陽光・蓄電池も“安心を支える設備”になる

このテーマは、設備提案にも活かすことができます。

在宅医療や在宅介護を考えると、太陽光や蓄電池は単なる付加価値ではなく、安心を支える設備として位置づけることができます。これまで「あった方がいい」とされてきたものが、「ないと困る」に変わる場面が増えていくからです。

だからこそ、売り込むのではなく、住まい全体の設計や暮らし方の提案の中で自然に必要性が伝わる組み立てが重要になります。

■新築だけでなく、ストック市場にもつながる

この視点は、新築提案だけの話ではありません。

退院後の暮らしに対応するリフォーム、同居に向けた改修、独居高齢者向けの見守りやレジリエンス設備の追加など、ストック市場とも非常に相性が良いテーマです。

今後は、既存住宅をどう療養可能住宅に変えていくかが大きなポイントになります。
新築、リフォーム、建替えを別々に考えるのではなく、将来の暮らしまで見据えた提案としてつなげていくことが、これからの事業の広がりにつながります。

■価格ではなく、提案力で選ばれる時代へ

これからの住宅提案で問われるのは、家を売ることそのものではなく、その家でどんな暮らしが続けられるかを語れるかどうかです。

将来への不安を、設計や設備、性能提案に変えていくことができれば、価格競争に巻き込まれにくい営業ストーリーをつくることができます。

高齢化が進むこれからの時代に選ばれる住宅会社は、今の住まいだけでなく、その先の暮らしまで見据えて提案できる会社ではないでしょうか。

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