令和6年度 国土交通省住宅局関係予算概算要求から見える今後の重点施策①
目次
●主要事項
●解説
主要事項
今年の9月1日に発表された国土交通省住宅局の予算概算要求では、以下の5つの分野における施策を中心に、重点的に取り組むことが明記されました。
①誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保
②住宅・建築物におけるカーボンニュートラルの実現
③住まい・くらしの安全確保、良好な市街地環境の整備
④既存ストックの有効活用と流通市場の形成
⑤住宅・建築分野の DX・生産性向上の推進
上記の5つの分野において、昨年度に比べ予算要求が拡充、継続された施策、また新規の施策について解説していきます。
今回のコラムでは①の「誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保」について見ていき、その中でも特に今後の重点施策となりそうなものについて解説します。
誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保
子育て世帯など、住居確保が必要な人々が増加していますが、公営住宅の供給が限られている状態です。そこで、安心して暮らせる多様な住まいの確保に向け、子育て世帯等が安心して暮らせる住まいの実現や、住宅セーフティネット機能の強化を図っていくことを目的としています。
セーフティネット登録住宅への支援の強化
「セーフティネット登録住宅」とは、住宅セーフティネット制度の一部で、住宅確保要配慮者(高齢者、障害者、子育て世帯など)のために入居を受け入れる賃貸住宅です。改修補助や入居者支援を提供し、住宅確保要配慮者に居住支援を提供することができます。
誰もが安心して暮らせる住まいを確保できるよう、セーフティネット登録住宅について、改修費、家賃低廉化、家賃債務保証料等低廉化に係る支援の強化が明記されました。
解説
セーフティネット登録住宅への支援の強化は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅に対する支援を増やし、専用住宅を含めた登録の促進を図る事業です。この事業の影響で、住宅産業の展望は以下の通りです。
- 住宅セーフティネット制度の登録基準は、地方公共団体による強化・緩和が可能です。このため、地域に合わせた対応ができる中小規模かつ地域密着型の住宅業者にとっては、需要や競争力が増す可能性があります。
- 一方で、自社で設計し、住宅を大量生産している大規模な住宅業者にとっては、登録による部材や設備の変更などのコストや、家賃補助などの支援による収益性の低下などのリスクがあります。
- 登録住宅は、外国人の支援や孤独・孤立対策などを行う場合、補助限度額が上がります。このため、住宅業者は、社会的な課題に対応した住宅の提供や、住宅関連の新規事業の開拓などに取り組むことで、付加価値の高い住宅を提供することができる可能性があります。
- また、登録住宅は住宅確保要配慮者の入居を拒まないことが条件ですが、これによって入居者の質が低下するという懸念もあります。住宅業者は、入居者の選定や管理、入居中や退去時のアフターサービスにも注意する必要があります。
以上のように、セーフティネット登録住宅への支援の強化は、住宅業界にとって、チャンスとリスクを併せ持つ事業と言えます。住宅業界は、登録に参加することで、住宅確保要配慮者の居住支援に貢献するとともに、自社の事業の拡大や競争力の強化を図ることができる可能性があります。しかし、登録には、コストやリスクも伴いますので、住宅業者は、自社の事業戦略や市場環境に応じて、参加の是非を慎重に判断する必要があります。
参照:https://www.mlit.go.jp/page/content/001625456.pdf(国土交通省 住宅局 予算概算要求)
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