令和6年度 国土交通省住宅局関係予算概算要求から見える今後の重点施策③

目次

主要事項

今年の9月1日に発表された国土交通省住宅局の予算概算要求では、以下の5つの主要事項における施策を中心に、重点的に取り組むことが明記されました。

①誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保

②住宅・建築物におけるカーボンニュートラルの実現

③住まい・くらしの安全確保、良好な市街地環境の整備

④既存ストックの有効活用と流通市場の形成

⑤住宅・建築分野の DX・生産性向上の推進

上記の5つの主要事項において、昨年度に比べ予算要求が拡充、継続された施策、また新規の施策について解説していきます。

今回のコラムでは③の「住まい・くらしの安全確保、良好な市街地環境の整備」について見ていき、その中でも特に今後の重点施策となりそうなものについて解説します。

住まい・くらしの安全確保、良好な市街地環境の整備

災害が激甚化・頻発化している状況等を踏まえ、安全な住まいとくらしを推進することを目的としています。

建築物耐震対策緊急促進事業、住宅・建築物耐震改修事業

「建築物耐震対策緊急促進事業」は、耐震診断を義務化した建築物の所有者に耐震診断や補強設計、耐震改修の支援を提供し、超高層建築物などには長周期地震動対策も行います。一方、「住宅・建築物耐震改修事業」は、道路沿道の建築物に耐震診断や改修の補助を地方公共団体が行います。これらの取り組みにより、建築物の耐震性が向上し、災害時の安全性が増します。

 大規模な建築物や緊急輸送道路の沿道の建築物等の耐震化をさらに促進するため、建築物耐震対策緊急促進事業等による支援の拡充と延長が明記されています。

出典:国土交通省 住宅局 予算概算要求

解説

建築物耐震対策緊急促進事業は、耐震診断を義務付けられた建築物の所有者である民間事業者等が実施する耐震診断・補強設計・耐震改修、及び、超高層建築物等の所有者である民間事業者等が長周期地震動対策として実施する詳細診断・補強設計・改修工事に対して、国が事業に要する費用の一部を助成するものです。

住宅・建築物耐震改修事業は、多数の者が利用する大規模建築物、災害時に機能確保が必要な建築物、緊急輸送道路沿道の建築物等の耐震診断や耐震改修、建替え等に対して支援を行うものです。

これらの事業により、住宅産業は以下のような展望になっていくと考えられます。

  • 住宅市場は人口減少や持家志向の低下などにより縮小傾向にありますが、一部の都市や高齢者向けの住宅には需要が残ると予想されます。特に、災害時に機能確保が必要な建築物や避難路沿道の建築物などは、耐震化の重要性が高まるでしょう。

  • 耐震化に関する技術やサービスの開発や提供には、新たなビジネスチャンスがあります。すでに、大手企業が高齢者向けの住宅や長周期地震動対策などに取り組んでいます。住宅業界は、既存の住宅に「健康」や「安心」といった付加価値をつけることで、差別化を図る必要があります。

以上のように、建築物耐震対策緊急促進事業と住宅・建築物耐震改修事業は、住宅産業にとっては、厳しい状況に対応するための契機となるとともに、新たな市場や技術を開拓するための機会となると考えられます。住宅業界は、これらの事業を有効に活用し、災害に強く、快適な住環境を提供することで、社会に貢献することができるでしょう。

参照:https://www.mlit.go.jp/page/content/001625456.pdf(国土交通省 住宅局 予算概算要求)

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